石塚 知香子

石塚 知香子
原子力工学部門

職名
准教授
電話
03-5734-3061
Eメール
m.isct.ac.jp
研究室HP
https://sites.google.com/view/chikako-ishizuka-lab
研究者リンク
 

研究の特徴

安全で身近な原子力システムの実現によりエネルギー資源問題解消とカーボンエネルギーニュートラル社会の実現による自然環境保護を目指す。とくに核反応の利用に着目し、原子力システムの安全性および経済性の向上に関する研究や放射線治療の精度向上につながる研究を行っている。GXI研究として、もんじゅと同等の核変換効率を持ち、炉内の温度が高い状態になると勝手に原子炉出力が低下して温度が下がる溶融塩高速炉の提案・開発を進めている。

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研究の概要

  1. 核データ
    核融合や核分裂は原子力システムの根幹をなす重要な核反応であるが、その他にも核変換による放射性廃棄物の低減や放射線医療費の製造、重粒子線治療や宇宙線被ばくなどで様々な種類の核反応情報が活用されている。原子核物理の成果として得られる最新の核反応情報は核データ評価を経て評価済み核データライブラリという形で世の中に出荷される。その際に重要となるのが不確かさの評価である。石塚研では最新の理論核物理研究という最上流の部分から核データ評価を経て、新たな核反応情報が最下流のバックエンドに与える影響の評価までを統合的に研究している。

  2. 核反応とその不確かさ
    核データの高度化のためには、実験または理論により信頼できる測定値や予測値を与えることが不可欠である。原子核を支配する核力の不定性のために、核反応では対象とする反応系の属性に応じて適した理論モデルが異なるため、石塚研では多次元ランジュバン模型や反対称化動力学模型、時間依存密度汎関数法などの理論モデルを開発しながら、核反応のより正確な記述方法を探求している。不確かさについては、機械学習を用いた研究を行っている他、共分散データに対してはIAEAのT6コードに基づくTotal Monte Carlo (TMC) 法による不確かさ評価方法の研究開発も行っている。

  3. 核変換と溶融塩高速炉
    脱炭素社会において世界中で安定かつ持続可能なエネルギー資源として再注目されている原子力では福島事故の教訓から不測の事態であっても安全性が丹保されるシステムが検討されている。石塚研では原子炉動特性評価により、塩化物溶融塩高速炉の実現可能性や核変換効率などを研究している。

  4. 重粒子線治療
    重粒子線治療とは癌治療の手法の一つであり、加速した炭素原子核を用いて体内のがん組織をピンポイントで破壊することができる。現在のところ、この治療計画を立てる際に利用されている模型(PHITSやGeant4など)では原子核がフェルミ粒子の多体系であることに由来する量子論的な効果が十分に組み込まれていない。そこで本研究室では、より現実に即した治療計画の実現を目指して、これらの輸送コードにフェルミ粒子性を考慮した反対称化動力学模型を導入し、その高度化に取り組んでいる。

  5. 宇宙線被ばく
    日本では世界に先駆けて宇宙線被ばく線量を評価できる放射線挙動解析コードPHITSが日本原子力研究開発機構を中心として開発されてきた。宇宙は地上に比べて百倍以上も放射線量の高い環境であり、その線源は太陽を含む恒星や超新星爆発に由来する荷電粒子の核反応である。PHITSでは最もエネルギーの高い領域を担うJAMというハドロンカスケード模型と流体模型を結合した模型が用いられているが、PHITS導入後、宇宙線被ばく評価には最適化されないまま利用されている。我々はJAMの開発者との共同研究でこの問題に取り組み始めた。本研究により、宇宙線被ばく評価の高精度化が期待できる。

キーワード

核データ、核反応、核変換、不確かさ、理論核物理、天体核物理